「建設従事者のアスベスト被害の早期救済と解決を求める意見書(案)」に反対討論

「建設従事者のアスベスト被害の早期救済と解決を求める意見書(案)」は、今定例会において、共産党の吉居議員から提出された意見書(案)です。しかしその内容が現在政府が行っている救済制度には一切触れられておらず、あたかも政府は何も対策を講じていないかの如く誤った認識をあたえるものであると、反対討論を行いました。

市民や国民に誤った印象を与え不安を煽り政府を貶める、国会を見ても野党の根拠なき決めつけや印象操作、それらに基づく責任追及は論点がずれており開かれた議論になりません。衆議院解散がないと分かった途端の問責決議案提出など、呆れます。参議院選挙前になって突然出てきたこの意見書案の目的も勘ぐってしまいます。まあ定数削減もできない与党に不満をもつのも理解できますが・・・。話がそれましたごめんなさい。

以下、反対討論案文を掲載いたします。



私は、第一号意見書案「建設従事者のアスベスト被害の早期救済と解決を求める意見書(案)」に、反対の立場から討論致します。
私が、この意見書に反対する理由は2点あります。
まず一点目は、現在政府が行っている救済措置が明記されておらず、あたかも政府は何の対策も講じていないかの如く誤った認識を与えている、ことです。
二点目は、提案理由に述べられた原因者であるアスベスト製造企業の責任追及と謝罪をもとめたことと意見書案の内容が違う、ことです。
以上、2点の理由をこれから詳しくご説明いたします。
 
まず一点目の、現在政府が行っている救済措置が明記されておらず、あたかも救済していないかの如く誤った認識を与えている。件について、であります。
日本政府が行ってきた、これまでの建設従事者アスベスト被害救済とその解決への歩みを、述べさせていただきます。
 
すでに、政府は、平成18年から、被害救済とその解決のために、『石綿による健康被害の救済に関する法律』に基づき、アスベストによる健康被害に係る被害者等の迅速な救済を図ることを目的に、労災補償等の対象とならない者に対して、救済給付を行っております。これは、アスベストによる健康被害の特殊性に鑑み、国が民事の損害賠償とは別の、行政的な救済措置を講ずることとしたものであり、原因者と被害者の個別的因果関係を問わず、社会全体でアスベストによる健康被害者の経済的負担の軽減を図るために制度化されたものであります。
 
具体的には、国、都道府県、事業主そして、アスベストとの関連が深い事業主からの特別徴収を原資に石綿健康被害救済基金を創設し、被害者または遺族へ救済給付を行っております。平成18年の給付開始以来平成27年度末時点での申請件数は15,220件で、そのうち10,985件が認定を受けております。また、支給対象期間の拡大、指定疾病の追加、請求期限の再延長、肺がん等の判定基準の見直しなど中央環境審議会 答申に従い、その都度改正され、今日に至っております。
また認定に係る対応の迅速化に向けた取り組みでは、当初平均173日要していた処理日数は平成27年度では106日まで短縮され、60日以内に処理された件数は29.3%であります。尚施行前死亡者で医学的判定を経ずに認定した平均処理日数は平成27年度で40日となっております。
またこの救済制度とは別に、労災保険制度による給付も行われております。労災給付は,休業損害や労働が制限されることによる減収を補填するために支給されるもので、国がアスベスト健康被害を防止する措置を取らなかったことに対する慰謝料的な意味が持たれています。労災が支払われなかった被害者家族に対する特別遺族給付金とあわせると、平成26年度末時点で5,853件を認定し補償がなされております。
また、被害にあわれた方々への賠償金として和解金の支給も行われております。これはアスベストを使用していた事業場等で働いていた経験のある方が、肺がんや中皮腫などの病気を発症した場合、国からの賠償金として550〜1300万円の支払いを受けることのできる制度です。平成26年に、アスベスト健康被害の国の責任を認めた最高裁判決が出されており、それ以来、裁判を提起した上で裁判上和解をするという形を取って、病状に応じた賠償金、裁判上では和解金と表現しますが、これを支払うようにしています。加えて、弁護士に依頼した場合には,上記金額に弁護士費用相当分として10%を加算した金額が支払われます。
このように、現在、石綿健康被害救済制度、労災給付、そして裁判による和解金、と3つの制度によって、被害者または遺族に対する給付により補償がなされています。
また、救済制度の周知徹底を図るため、医師・医療機関だけでなく、患者や広く国民を対象とした制度周知を実施しており、TVコマーシャルをはじめ、WEB関連、交通広告、全国紙への周知を続けているところであります。
さらに、被害の拡大を根絶する対策として、平成18年に廃棄物の処理及び清掃に関する法律を改正し石綿含有廃棄物の処理基準を制定するとともに、平成23年に同法施行令を施行し、特別産業廃棄物である石綿含有廃棄物や廃石綿等の適正処理を推進しています。平成25年には大気汚染防止法を改正し、アスベスト飛散防止対策の更なる強化を図っております。
このように、政府が行っている救済制度、労災給付、裁判による和解金、周知活動、拡散防止対策には触れず、あたかもそれらの制度がないかの如く、被害者の救済に向けて速やかな対処をもとめた表現は、的確ではなく、市民、国民に誤った認識を与えることを強く危惧しております。
誤った印象を与えかねない意見書案を提出することは、いたずらに国民の不安をあおり、政府を貶め、マスコミの誤認報道を誘発しかねません。それは国会での政局の道具にもなり、いたずらに国会運営に支障をきたすものと考えます。
 
次に、提案理由で述べられたことと意見書案文の整合性が取れていないことです。そのことについて述べさせていただきます。
今定例会期中に、提出者である、共産党の吉居議員に、国の救済制度についての認識と意見書の提案理由の説明を、求めました。
救済制度については、一定の要件に該当するアスベストとの関連が深い事業主からの特別徴収することについて認識の違いがあったものの、その救済制度の存在と実施を認識しているか、との確認をいたしました。「この意見書は、提案理由で述べられた通り、国の責任を追及するものではなくアスベスト製品製造企業などへの責任の所在と謝罪を求めるものである」との回答をえました。しかしながら意見書提出の目的である関連企業の責任追及と謝罪の要求については、意見書案には一切記載がありません。
私は、日本の高度成長期を支え、日本経済の礎になった方々が、アスベスト被害で苦しい思いをされている現状は一刻もはやく改善しなければならないと願っています。アスベスト関連事業で被害にあわれたすべての方々の、一日も早い救済を望んでおります。いまだに救済されていない被害者の方々への周知徹底や処理の迅速化、裁判によらない損害賠償の支給など法整備を進めて頂きたい思いは強く持っています。しかしこの意見書では、政府が行っている救済制度や具体的施策には触れていないばかりか、提案理由と意見書案の整合性がまったく取れておりません。このような意見書を春日市議会として本当に提出できるのでしょうか。
 
提出者には、事前にその修正をもとめたところ、修正が行われないまま意見書案を提出されています。そして、そのことについての一切の説明も、未だ、行われておりません。
意見書とは、地方公共団体の公益に関して、議会の意思を意見としてまとめた文書のことです。議会が行う意思決定のうち、広く対外的に表明をすることが必要だと考えたものを議決する大変責任ある行為だと考えております。今回の意見書案において、事実を明記せず誤った認識を与えかねない、何に対して、どう取り組むのか疑問は残ったままであり、理解をすることは到底できません。



 
以上、述べました理由から、私は、本意見書案の提出に反対するものであります。

実際の討論とは一部表現等修正しています。この意見書は、残念ながら意見書として可決されました。近いうちに春日市議会HPにて掲載予定です。

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